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河原 豊*; 鷲家 真吾*; 池田 善光*; 長澤 尚胤
no journal, ,
天然系繊維の紫外線劣化機構には、吸着水が関与していることが知られている。その主な劣化に寄与する反応は、酸素がUVで励起されて水を過酸化水素に変換することによる繊維表面から内部への過酸化水素の拡散によってもたらされている。一方、線は透過性に優れた高エネルギーの電磁波であるため、親水性繊維の場合、繊維内部においても容易に攻撃を受けて劣化が促進することが予測される。毛髪や羊毛をはじめとするケラチン繊維は紫外線に対して比較的安定であったことから、毛髪に注目して線照射による力学物性の変化を調べた。一般に放射線滅菌に利用されている線量である25kGyを毛髪、綿繊維に空気中で線照射した。その結果、照射後、綿繊維は、未照射と比較して強度が253Nから217Nと相対的に85%まで顕著な強度低下が見られたが、毛髪の強度低下は見られなかった(未照射試料:1.34N,照射試料:1.42N)。これは、綿繊維は従来の通り放射線分解により強度が低下したが、毛髪の場合、強度に関連する階層構造中のパラコルテックス部位への損傷が線照射によってほとんど生じなかったためと推測される。